みらいもりやまは本日16日(月)、お盆休みをいただいております。
ということで、この3日間どこに出かけるでもなく、ダラダラと過ごしたので、
今夜は実家に帰って、「大文字の送り火」でも十数年ぶりに見物しようかと思っている石上です。
タイトルについてですが、最近読んだ
伊坂幸太郎氏の作品。
2004年~2005年にかけて「小説すばる」に連載されていたものがまとめられ、
2006年3月に集英社から刊行、2009年に文庫化されており、
私はたまたま立ち寄った本屋で、集英社文庫の「ナツイチ」の一冊だったので購入しました。
伊坂氏は私と同じ1970年代生まれということで、昨今の人気作家の中でもかなり若手に分類されるのではないでしょうか。
私が彼を知ったのは、3作目の
「陽気なギャングが地球を回す」
刺激的なタイトルと装幀に魅せられ、
伊坂という人を全く知らぬまま購入しました。
「ロマンはどこだ」
なんて渋い主人公の決め台詞があったりして
読んだ瞬間から、映画化されるだろうなぁと予感はしていました。
小説好きって、頭の中で
イメージ(妄想)を膨らますもので、
好きな小説=好きな映画
にはまず
なり得ないので、小説を読んで良かったなと思う作品に関しては、
基本的に、映画を見ないようにしています。
ただ、今回は主演が大好きな
「大沢たかお」ってことで、見ちゃいましたけど・・・。
なぜ
大沢たかお好きなのかといえば、約15年前、彼主演でテレビドラマ化されたおかげで、
沢木耕太郎「深夜特急」
という小説に出会えたからです。(同じコータローだ)
伊坂作品については、まだ半分くらいしか読んでいないのですが、
「アヒルと鴨のコインロッカー」
伊坂作品における私のお気に入りナンバーワンはほぼ間違いないです。
偶然でしょうが、大好きな村上龍の有名な小説のタイトルが入っていたのもよし。
あくまで私の好みであって、
他にも既に映画化されているのが
7作品と飛ぶ鳥を落とす勢いの作家さんですから、
何を読んでも面白いのでしょうけど・・・。
最後に表題の
「終末のフール」
の紹介。
時代は現代。
舞台は「8年後に小惑星が衝突し、地球が滅亡するといわれ、パニックに陥った5年後(つまり滅びる3年前)の仙台のまち」
なんかややこしいですが、一度はパニックに陥り、略奪や殺人が横行したものの、5年も経って少しみんなが落ち着き、残りたった3年をどう生きるかということをテーマに8つの家族(あるいは独り)の過ごし方を追いかけています。
ノストラダムスの予言など、パニックまでには至らなかったけど、世紀末にちょうど20歳を迎える予定だった私自身も、十代のとき、地球の未来に
そこはかとない不安を感じていたものです。
伊坂幸太郎氏がよく言われるのは
「現実に上手に嘘を交えた話ほどおもしろい」
なので、彼の小説に勧善懲悪のスーパーヒーローは出てきません。
本当にありそうでない話。
でも明日、自分の身に起こっても全然おかしくない。
以下、
「終末のフール」
において、私が一番気に入ったシーン
終末のフールの中の8つの短編のひとつ
「鋼鉄のウール」という話の中の一幕です。
地球が滅びることなど一切関知せず、キックボクシングの練習を続ける
「苗場」というボクサーとそれを見る
「ぼく」が主役です。
小惑星が落ちてくるなんて話がなかったとき、
雑誌の対談企画でインタビュアーである俳優が苗場に「明日死ぬって言われたらどうする?」と尋ねます。
それでも変わらず、ローキックと左フックを続けるという苗場を俳優は「明日死ぬのにそんなことするわけ?」と嘲笑います。
それに対して苗場の一言
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
※集英社文庫「終末のフール」p220より引用