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2010年10月05日

永遠の0(ゼロ)

永遠の0(ゼロ)

帰りの新幹線で読むために、と小田原駅に隣接する三省堂で購入した本です。

日本全国の人に読んで欲しい・・・と心の底から思える本でした。

まず私の周囲の方だけでも、と思ったので、静岡紀行をさておき、取り急ぎ記事にしました。

興味がおありの方にお貸しします。
600p近くありますが、2~3日で読まずにはいられないと思います。


ゼロとは、零戦(ぜろせん)。

先の大戦において、世界最強と謳われた、大日本帝国海軍の零式艦上戦闘機の呼び名です。


物語は、現代日本(2006年刊行)において、人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎(26歳)が、太平洋戦争において特攻で戦死したこと以外、謎に包まれる祖父・宮部久蔵のことを、ひょんなきっかけで調べ始めるところから始まります。

「軍隊の履歴を並べても祖父の人間性は何も出てこない。祖父がどんな人だったかを知るには、彼を覚えている人物に当たらないことにはどうにもならない。八十歳を超える当時の戦友たちもほとんど亡くなっているだろう。・・・略・・・今が間に合う最後の時かもしれないと思った。」

祖父・宮部久蔵のことを記憶する戦友たちに話を聞くうちに、様々な真実が明らかになっていきます。

戦争の悲惨さ、当時の日本人兵士の素晴らしさ

私も作中のジャーナリストと同様に、神風特攻隊として「万歳!」と叫びながら敵艦に特攻して散った、日本兵はある意味、狂信的で、そしてある種の洗脳を受けていたものだと誤解していました。

若きジャーナリストが、神風特攻要員であった老人に投げかけます。

「特攻隊員の遺書を読めば、殉教的精神は明らかだと思いますが」

その言葉に対し・・・

「馬鹿者!あの遺書が特攻隊員の本心だと思うのか。
当時の手紙類の多くは、上官の検閲があった。時には日記や遺書でさえもだ。
戦争や軍部に批判的な文章は許されなかった。
また軍人にあるまじき弱々しいことを書くことも許されなかったのだ。
特攻隊員たちは、そんな厳しい制約の中で、行間に思いを込めて書いたのだ。
それは読む者が読めば読みとれるものだ。
報国だとか忠孝だとかいう言葉にだまされるな。
喜んで死ぬと書いてあるからといって、本当に喜んで死んだと思っているのか。
・・・略・・・
遺族に書く手紙に『死にたくない!辛い!悲しい!』とでも書くのか。
それを読んだ両親がどれほど悲しむかわかるか。
大事に育てた息子が、そんな苦しい思いをして死んでいったと知った時の悲しみはいかばかりか。
死に臨んで、せめて両親には、澄み切った心で死んでいった息子の姿を見せたいという思いがわからんのか!」


自分に言われているようでした・・・。
今までこんなことに気付けていなかった自分を恥じると同時に、
日本人というのは、なんと慈悲に溢れ、愛に満ち、潔い人たちだったのかと・・・。

老人は、あの大戦を引き起こしたのは、新聞社(ジャーナリスト)だと切り捨てます。
そして最後に、現代日本についても・・・。

「戦後多くの新聞が、国民に愛国心を捨てさせるような論陣を張った。
まるで国を愛することは罪であるかのように。
一見、戦前とは逆のことを行っているかのように見えるが、自らを正義と信じ、愚かな国民に教えてやろうという姿勢は、まったく同じだ。
その結果はどうだ。
今日、この国ほど、自らの国を軽蔑し、近隣諸国におもねる売国奴的な政治家や文化人を生み出した国はない。」


最後の一文を真っ向から否定できる人がどれだけいるでしょう・・・。


作品は、太平洋戦争の経過、そして日本がどんどん劣勢に追い込まれていった原因についても触れています。

なぜ、真珠湾において、珊瑚海において、ソロモンにおいて、帝国海軍がとどめを刺せなかったのか・・・。
これらのミスは、後の戦局に大きく影響したこともあり、私にとっても不思議で理解しがたい事実でした。

将官クラスが、現在のキャリアと同じく、出世競争を勝ち抜いてきた選りすぐりのエリートたちであり、
「どうやって敵を打ち破るかではなくて、いかにして大きなミスをしないようにするかということを第一に考えて戦っている」
という健太郎の姉の推測には、確かな説得力があります。

ミッドウェイの大敗北が、軍部により、国民にひた隠しにされた例を挙げるまでもなく、当時、日本を動かしていた一部の人たちの過ちを指摘、是正どころか、多くの人が知ることすらままならなかったのです。


私が育った1980~1990年代において、新聞・テレビは絶対でした。
小学校のときから、いい学校に入りたいなら・・・と父に言われ、必ず毎朝、新聞に目を通していたものです。
小学生の私には難しすぎた社説よりは、1面下部にあるコラムを楽しみにしていました。
受験に出題される確率が高いということだけで、「編集手帳」のY社から、「天声人語」のA社に変えてくれと懇願したこともあるほどです(笑)

しかし、2000年前後から、その環境は激変しました。
一人暮らしを始め、新聞を取るのをやめたこともありますが、何より大きいのはインターネットの普及です。
もし、インターネットがなければ、親から習ったこと、学校で習ったこと、新聞等報道で知ったこと、これだけが私の世界だったはずです。
私が、この本を読んで、なるほどと思えるのも、現在の日本に取捨選択できる情報があふれているからだと思います。

戦後、多くの日本人は愛国心を忘れてしまいました。
私は、愛国心なきものに、ふるさとを愛したり、家族を愛したりすることはできないと考えています。
まちづくりには、愛郷心(ふるさとを愛する心)が必要なのです。
すなわち、日本国民にはもっと愛国心が必要であり、どうしてもタブーになりがちな先の大戦について、もっともっと知っておく必要があると、私は感じました。


作中で聞き手である佐伯健太郎は、私と同い年(作品発表時の年齢)。

数年前に他界した、私の母方の祖父も、あのシベリア抑留により、戦後数年間、ソ連から帰って来れなかったそうです。
私は0歳の頃から、祖父母に面倒を見てもらいましたが、亡くなるまで、戦争の話は一つも聞くことができませんでした。
元々、寡黙な人だったから話さなかったのか、やはり話したくなかったのか、今となってはわかりません。

でも、一度でいいから、健太郎のように真摯に向き合って、質問してみるべきだったなと、今は思います。


もう150年も前の出来事となる、明治維新のことはよく知っているし、度々、TVドラマ等にも取り上げられるのに、いまだ生き証人のいる、たった半世紀前のことを日本国民は知らなさ過ぎるのでは・・・、そう思えてなりません。




永遠の0(ゼロ)

今年2月にお会いして以来(⇒記事)、すっかり虜になってしまった、児玉清氏が「歯を喰いしばってこらえた。が、ダメだった」本。
私は、歯を喰いしばることもできませんでした。場面ごとに、涙が溢れ、嗚咽するほどに胸に響きました。


最後に、その児玉清氏の解説より引用

「戦争のことも、零戦のことも知らない若者たちが読んでも素晴らしい感動が彼らの心を包むであろうことはまちがいないことをここで強調しておきたい。いや、むしろそういう若者たちにこそ、ぜひ本書を読んでもらいたいと痛切に思っている一人だ。作者の一つの意図もそこにあったと思う。事実、本書の中では、太平洋戦争とはどんな戦争で、どのような経過を辿ったのか。また、この戦争に巻き込まれた我々日本人は、軍人は、国民は、その間に、どうのように戦い、どのように生きたのか。国を護るために戦わなくてはならなくなった若者たちの心とは、命とは。彼ら若者たちを戦場に送り出したエリート将校たちの心は、といったことを作者はものの見事にわかりやすく物語の中にちりばめているからだ。なまじの歴史本などより、はるかに面白く戦争の経緯とその実態を教えてくれる点でも実に秀逸な物語だと思うのは僕だけであろうか。」



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Posted by みらいもりやま21 at 21:16│Comments(5)つぶやき

この記事へのコメント
百田氏は「ラブアタック」「探偵ナイトスクープ」といった今までになかったまったく新しい視聴者参加型番組の構成作家であった人ですよね。
笑いや本書のような感動を与えられる才能豊かな人ですね。
Posted by N島 at 2010年10月06日 09:03
>N島さま

コメントありがとうございます。
本当に素晴らしい本でした。
彼の他の作品も読んでみたいと思います。
Posted by みらいもりやま21 石上 at 2010年10月06日 17:51
はじめまして。
購入して読んでみようと思いました。共感するところ、思うところ多々感じました。
Posted by 字遊人 紫炎 at 2010年10月06日 18:44
>宇遊人 紫炎さま

はじめまして。ご訪問&コメントありがとうございます。

私にとって最高の褒め言葉です。本当に嬉しいです。

先日、門前アート市でお見かけしたのに、声もかけず、大変失礼しました。

次にお会いしたときは、必ずご挨拶致しますね。
Posted by みらいもりやま21 石上 at 2010年10月06日 23:38
ぜひお声をかけて下さい。
次回は11月に出店させて頂く予定ですので。ありがとうございます
Posted by 字遊人 紫炎 at 2010年10月07日 00:33
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