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2011年02月20日

埼玉県秩父市(2月17日)

1884年、自由民権運動と農民一揆が複雑に絡みあい、日本史上最大規模(約3,000名)の民衆蜂起が起こりました。
日本史で習った、その秩父事件の地。
この地に、商店街活性化を目指す誰もが、参考にすべき商店街があります。

みやのかわ商店街振興組合
今回は、この商店街の理事長であり、商工会議所副会頭でもある島田憲一様にお話を伺い、市内を案内していただきました。

組合員数・・・115
驚異的な数字です。
秩父市は人口7万人弱と守山よりも小さなまち。
長野や山梨と境を接する、埼玉の山奥にあるため、特に商業が発達しているわけではありません。

ではなぜ、これほどまでに商店街振興組合員数が多いのか。

いくつも理由があると思いますが、第一に考えられるのは、「月会費の安さ」
なんとたった500円
だから、気軽に付き合いで加入、継続できるのでしょう。

みやのかわ商店街振興組合員紹介
ご覧になれば、わかりますが、薬局、病院、生命保険、銀行、郵便局、タクシー会社などありとあらゆる職種、業種が加入されています。

いくらなんでも月500円で、どうやって後述するような様々な事業を仕掛けられるのか・・・。

島田理事長曰く
「やりたい人がやりたいことをやることが大切。商店街の中のたとえ2~3人でも、やりたいといってきたら、やらせます。お金が必要なら、やりたい人が出資すればいいんだから。個人や個店だと警戒されるのが、商店街という単位でやれば、非常にやりやすくなりますから。」

「やりたい人が・・・」。実はつい先日、山納さん(⇒2011年1月30日の記事)からいただいたばかりのキーワード。

この一言で、(あっ、この方も、人材発掘、巻き込みの天才なんだろうな)と私は思うのです。
で、そんな人が上のほうで、どっしり構えてくれている、商工会議所、商店街。
若い人たちが伸び伸びと、いろんなチャレンジができる環境なのだろうと想像しました。

「商店街全体を動かす必要なんてないし、足を引っ張る人はほっておけばよい。とにかく最低1年間はやってみて、それでも赤(ダメ)ならやめればいいんです。」
(うんうん、そーだそーだ。)とまさに我が意を得たりと心の中で嬉しくなりました。

少なくともこの1年、
規制概念、マンネリを打破した「ほたる探検紀行」、
若手の商業者たちが、市や商工会議所、商店街に頼らず始めた「GTR」
夏まつり以外で初めて、商店街の枠を超えて協働できた「100円商店街」
そして、中心市街地地域、商工会員の縛りを取っ払った「まちゼミ」
間違いなく、守山は動き出しています。しかも恐ろしいまでのスピードで。
この事業が1年経って、どれほど残っているか?
そんなことすらどうでも良い気がするのです。
大切なことは、
1.とにかくやってみるということ。
そして、
2.それを協力、支援する体制、風土があること。
どちらかが、欠けても事業は起こせません。
少なくとも守山のこの1年間には、それがあったということなのだと私は思います。
島田理事長「いくら計画つくったって、活性化などしない。汗をかくべきなのです!」
そういって、20年前動き出した「みやのかわ商店街」


【ナイトバザール】
夜間、商店街内の国道を歩行者天国とし、そこで様々な催し物を開催します。(守山の夏まつりに酷似)
このみやのかわ商店街が発祥といわれており、以降、全国各地の商店街で模倣イベントが開催されます。
1987年10月に第1回を開催、2010年12月には第247回を数え、現在も継続中。
いまや、みやのかわ商店街の代名詞ともなっている、ナイトバザール。
毎月1回、とりあえず半年続けようと始まった、ピーク時は1回3万人以上の人出、各店が一晩で一週間分の売上を上げるというモンスターイベントに発展したのです。

長く続ける秘訣
第一に「金をかけずに知恵を出す」
第二に「ナイトバザールを自分たちが楽しむ」
第三に「いい加減にやっている」
だそうです。

自身を省みると、第二、第三はOK。
第一については
「知恵を出さずに、他地域をパクる。そして相撲は人のふんどしで。」
状態ですので、もう少し、ない知恵を絞り出したいと思いますw

もう一つ、工夫された点。
「雨対策」
屋外イベントにとって、確かにこれは致命傷。
天気予報如何では、主催者側は前日に眠れぬ夜を過ごすことになるのです。

当初みやのかわ商店街でも、毎月、雨にビクビクしながら、「ナイトバザール」を開催していたそうです。
そんなある日、商店主の発案で、中古車を購入します。
もちろん、知り合いのところで、恐ろしいくらいの安値で。
で、その車をナイトバザールで展示します。
「もし開催中に雨が1mm以上降ったら、710(ナイト)円で販売します!」
という張り紙とともに。

運良くなのかどうなのか、不思議とそれから3年間、雨が降ることはなかったそうです。
マスコミなどに大きく取り上げられたこともあり、展示されていた中古車が、新車(ディーラーがスポンサーについた)に変わったのだとか・・・。

まさに、事実は小説より奇なり。冗談のような実話でした。

島田理事長「ナイトバザールが目的じゃなくて、まちづくりの手段だってことをみんな理解しているから継続できるんだと思います。」
(この言葉には、『もし目的を達せられなくなれば、手段である「ナイトバザール」はいつでもやめてしまおう』という意味が含まれていると思います。継続することに無理にこだわるのではなく、常に知恵を出して、新しい活性化施策を打ち出していく、そんな姿勢を感じました。)

そう「目的」「手段」
ここを勘違いしがちなんですよね。
結果、手段であるはずのイベントが目的となり、実施することばかりに気をとられ、本来の目的を忘れてしまう。
(※注:ここでいう、目的とは、商店街の活性化すなわち、個店の売上向上であると私は考えます)


【楽楽屋】(=出張商店街)
高齢者、障がい者施設等への出張販売。

あるとき、みやのかわ商店街が買物代行を始めたそうです。
どこへ行っても「いいことをしてるね」と褒められたのに、
理事長がヘルパーさんに言われてショックだった一言。
「あなたは、彼(彼女)らの気持ちをわかっていない。便利なことがいいこととは限らない。彼らが本当にしたいのは買物なのだ」
それが、この楽楽屋と名付けられた、出張商店街を始めるきっかけとなったのです。

商店街の有志5~6店舗の店主が、色々な物を施設に持ち寄り、買物をしていただく。
嬉しさのあまり、買物カゴに物をつめこみすぎる人々を見て、「やって本当に良かった」と理事長は思ったそうです。


【和同開珎】
一時期流行した地域通貨の一種。
(正確には、無期限使用可のコイン型共通商品券)

埼玉県秩父市(2月17日)

708年、秩父で銅が産出し、朝廷に献上されたことから、和銅元年と改元され、和同開珎がつくられたことにちなんで平成11年3月に商店街が発行。

当初これ1枚(1,000円分の商品券)を5%のプレミア付き(950円)で販売したところ、2時間で3億円分を完売したそうです。
現在も、3%のプレミア付き(970円)で販売中であり、その出来のよさ、物珍しさから、記念に購入していく観光客は後をたちません。


【セレモニー事業】
公会堂を使って、商店街が葬儀を執り行います。

【おたすけ隊】
あるとき、島田理事長は障がい者の方から
「弁当一つでも、いちいちタクシーを呼ばなきゃ買えない」
と悩みを聞きます。
だからといって、完全なるボランティアには気をつかう・・・。

そこで考え出された「おたすけ隊」
高齢者や障がい者、子育て中の女性が利用できる買物や家事支援のサービス

利用者はチケット(1時間分800円)を購入し、サービスを受けた時間分だけボランティアに渡す。ボランティアは受け取ったチケットを、秩父市内で使える共通商品券(500円分)と引き換えられるというものです。。

「利便性」と「まちなかでお金を回す」という2点を見事に兼ね備えた、素晴らしいシステムです。


他にも、旅行会社と提携してのまちなか観光の誘致など、数え切れないほどの事業に取り組んでおられます。

<これだけのことをできる理由>
私見ですが、冒頭に述べた、「やりたい人にやらせる」「とにかくやってみる」「目的と手段を明確にする」そのあたりに秘訣があるように感じました。



今回は、中小機構近畿支部のNさん、Y老師の「非常に参考になりますよ」とのアドバイスを受けて、中小機構の3名と、社長と私の5名で伺いました。守山市において今年末に向けて整備が進む、歴史文化拠点(旧宇野本家)の参考にしようと、古い町家を使った、施設の見学をすることが主目的だったのですが、島田理事長の話に完全に引き込まれてしまいました。
話を聞いた後、まちなかを案内していただいたのですが、これだけのまちならば、「箱が問題ではないのだろうな」と確信に至ったのです。
秩父ふるさと館という建物を見学したのですが、ここは当初、市が管理しており、赤字で運営されていたそうです。しかし、みやのかわ商店街の管理になった途端、黒字運営に変わったというのも、うなずける話でした。

やはりまちづくりは「人」、それにつきるのではないでしょうか。

おかげさまで、また素晴らしい人に出会えたと思います。
中小機構近畿支部の皆様、ありがとうございました。

埼玉県秩父市(2月17日)
秩父ふるさと館

埼玉県秩父市(2月17日)
館内のくらを利用したBar

埼玉県秩父市(2月17日)
他にも雑貨屋やカフェなどがテナントミックスされている

埼玉県秩父市(2月17日)
西武秩父駅からつながる「仲見世通り」


埼玉県秩父市(2月17日)


埼玉県秩父市(2月17日)
昼食はどんぶりからはみ出す「わらじカツ丼」

埼玉県秩父市(2月17日)



秩父にはかなり古く、レトロな建物が多く残存している
埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)

埼玉県秩父市(2月17日)



築約130年明治の商人宿を、みやのかわ商店街が手を入れ、憩いの場に・・・

埼玉県秩父市(2月17日)
【ほっとすぽっと秩父館】

埼玉県秩父市(2月17日)
まちなかに不足している地元野菜

埼玉県秩父市(2月17日)
近隣の人、観光客が気軽に立ち寄れる喫茶スペース

埼玉県秩父市(2月17日)
「Made in 秩父」商品の展示、販売

埼玉県秩父市(2月17日)
二階の多目的スペースでは、レトロな雰囲気で宴会も可

埼玉県秩父市(2月17日)
こだわりの裸電球

埼玉県秩父市(2月17日)
井戸

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Posted by みらいもりやま21 at 16:29│Comments(8)講演・研修レポート

この記事へのコメント
ほぉ~~っ!ええトコへ勉強に行ってきたんやねぇ。 街の雰囲気は、この近辺だと…郡上八幡なんかにも近いですな。 あそこも昭和初期やら大正期、あるいは明治?の洋風も和風も混淆なところですな。

文章のほうは…どうしてこの「シガサク」ブログは…こないに字ぃがちいさいのんか…それが残念。 飛ばし読みになってしまうでしょ。

そのくせ最後の「うなずく」は気になってしまいました。

「まちずくり」と言わないのと一緒ですわ。 「うなじ」を「つく」動作が転じて「うなづく」ですな。 「たんちょうずる」ってぇのも変でしょ?

あ!そうそう…落語の「天狗さし」っちゅうのんがありまして、桂米朝師匠のマクラのほうで…

「『100円玉を110円で売ったら儲かる』ちゃなアホな話…誰が買うねん」 「ほたらせめて…『90円で仕入れて100円で売り』ますわ!」 「その90円で仕入れられる店っちゅうのんはドコにあるねん?」 「それ聞こ思て…あんさんトコへ来ましてん」 「アホかっ!」

ここにあったんですなぁ! ちょっと感激です。 オモロイ仕掛け。
Posted by sun_ya_so at 2011年02月20日 19:14
「ガイアの夜明け」「プロジェクトX」「カンブリア宮殿」のような、まちづくりブログになってきました。
Posted by t-Gikan at 2011年02月21日 12:41
>sun ya soさま

いつもアドバイスありがとうございます。

字の小ささは、Ctrlキーを押しながら、マウスの真ん中のチョボを上にクルクル回すと、大きくなりますので、一度お試しください。

「うなづく」と「うなずく」については、辞書的にどちらでもいいようです。(「現代仮名遣い」では「うなずく」を本則とし、「うなづく」も許容できる、という玉虫色の書き方になったわけです。よって、公用文や学校教育、新聞などでは「うなずく」を使いますが、個人が「うなづく」を
使うことは制限されません。)<Yahoo!知恵袋より抜粋>
というより、「うなずく」が正しいともいえます。
これって、最終、個人の主観になると思うんですが、私は「うなずく」の方が、しっくりくるんです。
無論、「しずらい」⇒「しづらい」ですし、「せかいじゅう」⇒「せかいぢゅう」の方が、しっくりきますが・・・。

米朝師匠の落語ですか・・・。毎度、貴方様の見識の広さには感服するばかりです。


>t-Gikanさま

そんないいものではないと思いますが・・・。

そういえば、出張商店街は、まさにその「ガイアの夜明け」で取り上げられたそうですね。
Posted by 石上 at 2011年02月21日 13:37
ctrl+チョボ!…OKでした! サンきゅっ!

けどね…やっぱ「たんちょうずる」は…どう考えても変でしょ?「みかずき」だって。

「アタマの赤い+つる」「三日目の+つき」ですよね。 ほたらやっぱり…「うなじ+つく」ですわな。

恐らく…「つる」やら「つき」を知らない世代の子供なら、違和感はないでしょうが、それと同じなのだと思いますよ。

一度この著書をお読みになりましたら、目からウロコどころか…顔から眼玉が!いや…身体から頭が!落ちるくらい…よ~く理解できると思います。

お言葉ですが…(オコトバデスガ)高島 俊男・著 文芸春秋社

http://bit.ly/gqkkJH

この方、滋賀県の琵琶湖の湖西「こせい」地域にお住まいのようで、浜名湖のほうは同じ湖西でも「こさい」と読むのですが…

それと同じことだと思うのですよ。

だから…こういう混乱はすべて、「つ」の濁音は「ず」、「ち」の濁音は「じ」にすると一度決め付けた…旧文部省とバカな学者が悪いのです。

あなたのせいではありませんから安心はしてもいいですが、違和感は感じられるように…なってほしいのが…おじさんの願いです。
Posted by sun_ya_so at 2011年02月21日 19:58
「つまさき」を「つい」て「つまづく」これなら「つまずく」変でしょ?

「気」が「つく」から「気づく」これも「気ずく」変ですよね?

本当は「築く」だって「基礎」を「突き固める」から「きづく」なんですけど、これ「きずく」でないと変換できません。

おバカな学者たちと、大バカな旧文部省が、こんな風情も何もない、味気ない「基本用字例」作ったんですよ!

日本語は表意文字。 表音文字のアルファベットと同じに考えたらアキマセン。

これって…「まちづくり」でも…その「まち」の背景を知って、「つくり」あげてゆくことと…相通ずるのではないかいな?
Posted by sun_ya_so at 2011年02月21日 21:19
文庫本も出てた。 これなら安いし…シリーズも多いですね。

http://amzn.to/h4W9HA
Posted by sun_ya_so at 2011年02月21日 21:25
>sun ya soさま

細かい解説ありがとうございます。
なるほど、納得です。
滋賀県出身の方の本ということで、是非一度読んでみたいですね~。
で、またYEGさんで呼んでいただいて講演会とかww

確かに美しく正しい日本語が使えない、理解できなくなっている人が増えてきている現状は、日本人として憂うべきことでしょう。
私も、もっと精進することにします。
Posted by 石上 at 2011年02月21日 23:35
クルクル・チョコチョコこれはべんりですね!
ひょんなところでべんきょうになりましたw。
Posted by 老眼近視の鉄人 at 2011年02月22日 19:40
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