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2011年06月28日

県庁おもてなし課

「まず公務員じゃないのが絶対条件。そんでフットワークが軽くて、学歴がなくてもいいから気が利く奴。むしろ変に学歴のプライドとかない奴のほうがいい。そしてできれば若い女」(58ページより)

物語の冒頭で、おもてなし課創設一年で行き詰まった掛水に対しての、吉門の一言。
※掛水・・・主人公。高知県庁おもてなし課職員25歳
 吉門・・・高知県出身の有名作家。依頼されて観光特使となるが、何をやるにも民間感覚とずれているおもてなし課にダメ出しをあびせまくる。著者有川氏がモデル

吉門が、おもてなし課に新たに雇い入れるべきと考えたスタッフの人物像というわけです。
若い女性としたのは、基本的に旅行好きで、ロケーションにこだわるし、財布の紐が固い。しかも各種条件へのチェックが一番厳しい。だから女性のテストユーザーが頷けばその(観光における)企画は成功したも同然。

このくだりを読んでおもわず「う~ん」と納得させられると同時に物語に引き込まれました。



高知県庁には「おもてなし課」が実在します。
高知県庁観光振興部おもてなし課ホームページ

ホームページによれば、「おもてなし課」とは・・・
観光客の方々が高知の魅力を十分に楽しんでいただける環境づくりを進めるため、おもてなし課が誕生しました。
 「また高知に来たい!」と感じるリピーター、「あったか高知」ファンを数多くつくるため、おもてなし課は県民の皆様とともにがんばります。


これをモデルに、中谷美紀さん主演で映画化された「阪急電車」の著者でもある有川浩氏が小説化したのが、本書「県庁おもてなし課」(角川書店2011年3月発行)。

県庁おもてなし課


著者は、高知県出身であり、高知県観光特使でもあります。
「この物語はフィクションです」との断りがあるものの、すべて著者の実体験に基づいているため、非常に面白い。


「行政は変化を嫌う。特に地方は保守的だ。現状を維持できたらいいって感覚のままじわじわジリ貧になってることに気づかない。気がついたら財政破綻してるって寸法だ。破綻が見えてから慌てたって手遅れだ、そのときにはもうどうにもならない。
・・・中略・・・
県にはこれといって打つ手がない。手を打とうとしているかどうかさえ県民には疑問に思われているフシがある。何となくこのままじゃまずいなと思いながら、公務員という保証された身分で会議を踊らせてるだけじゃないのかって、俺だってそっちにいたら疑う。
観光にしろ商業にしろ、成功してる都市は変化を恐れてないんだよ。西日本なら例えば神戸。福岡。確かに発展してる、金儲けが巧い。けど、成功ばっかり重ねてああなってるわけじゃない。クローズアップされるのは、成功例ばかりだけど、失敗だってたくさんしてる。けどそこで守りに入らない。成功したときの金を無難な事業に回すんじゃなく、殖やすことを考えてる。賛否両論あるだろうけど、見習うポイントは多々あるんじゃないの」(144ページより)
という吉門の言葉に対して、掛水はこう思います。
自治体が金儲けを考えるなんて、という風潮は根強い。しかしそうではないのだ。土地に金が落ちてくるシステムを考える、それは自治体が胸を張って取り組むべき仕事だ。


スピードの遅さ
お客様視点の欠如
タテ割り構造
前例がなければダメ
県庁の驕り
県庁ルール


などなど、おそらく著者がリアルに感じたであろう、行政の弱点を厳しく指摘しています。
高知県に限らず、国や市、全国どこの自治体に置き換えたとしても、あてはまる点があるのではないでしょうか。
それらをいかに克服し、突破していくのか。

有川氏得意の恋愛ストーリーもちりばめながら、主人公が悪戦苦闘していくさまを見事に描いています。


先日の四万十ドラマの畦地氏の話(→過去の記事)もあり、この本を読んで是非とも高知県を訪れたくなりました。


物語の後半、苦心の末できあがる、冒頭のアドバイスに基づいて外部から採用した若き女性スタッフ発案、『観光のキャッチコピー』

新幹線はない。
地下鉄はない。
モノレールも走ってない。
ジェットコースターがない。
スケートリンクがない。
ディズニーランドもUSJもない。
フードテーマパークもない。
Jリーグチームがない。
ドーム球場がない。
プロ野球公式戦のナイターができん。
寄席がない。
二千人以上の屋内コンサートができん。
中華街はない。
地下街はない。
温泉街もない。

金もない。

 ・・・けんど、
  光はある!
(451ページ巻末特別企画より)


高知県まるごとレジャーランド化構想
「観光立県を目指すが、予算はない」ところから考え出された、高知県に既にある「山」「海」「空」「川」などの自然を活かすという構想。
高知県が開発下手ゆえに残った、この自然。
エコロジー、アウトドア、これらの言葉がプラスのイメージを持って世の中に定着した今、これに乗らない手はない。
「ないからこそ、あるものがある」
という逆転の発想

滋賀県としても近いものを感じずにおられません。
滋賀県そして守山市は、観光立県・市を目指しているわけではないと思いますが、この本に出てくる登場人物の考え方、視点、とても参考になると思います。
このブログをご覧いただいている皆様、特に市や県の職員さんに是非ともご一読いただきたいと思い、記事にしました。

そこにずっと住んでいる人にとって当たり前になってしまっている、素晴らしき素材、地域資源・・・。
まだまだ滋賀県、そしてこの守山市にはたくさんあるのだということを確信しています。




最後に・・・
この本と出会わせて下さった鉄子様、ありがとうございます!



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Posted by みらいもりやま21 at 11:19│Comments(4)つぶやき

この記事へのコメント
まさに表紙の青空のような物語でしたね。我が町守山にも、多紀ちゃんみたいな元気娘が現れますように☆
Posted by 常に外野の鉄子 at 2011年06月28日 13:07
おもてなし課、ものすごく興味あります。
Facebook課も画期的ですし、最近の行政は楽しい戦略増えていますよね。
えふえむ草津にも他府県の行政さんからいろんな売り込みきますよ。愛媛県の新居浜市からは、8月に行われる「笑顔甲子園」で協力してほしいとのことで、新居浜市の佐々木龍市長に電話で出演もして頂きました。三重県の津市からも観光のPR曲が出来たから放送してと出来上がったCD送られてきましたし。本の中だけでなく画期的なことをしている行政が増えてきています。
滋賀県も外に向けてのPRみんなで力を合わせてやっていきましょう!!
Posted by 戦士エミリン at 2011年06月28日 20:22
>鉄子さま

守山のタキちゃん、どこかに埋もれているんでしょうね~。
見つけたら教えて下さい。
その前に守山の卑弥呼もw


>戦士エミリンさま

facebook課が存在するんですか!?
確かに面白い。

滋賀にも面白い方たくさんいらっしゃいますし、頑張りましょう!
Posted by 石上 at 2011年06月29日 08:24
佐賀県武雄市に立ちあがっています。
facebook課がfacebookページを立ち上げて市民とのやり取りや市の広報などもされています。
facebookのページ検索してみてくださいね。
Posted by 戦士エミリン at 2011年06月29日 18:59
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