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2015年04月08日

大津市立図書館を民間委託にすべきか否か

今朝の京都新聞滋賀版に、興味深い記事が掲載されました。

図書館や病院まで民営化…大津市の行革、「性急すぎる」批判も

いずれ見れなくなるでしょうから、要旨を書くと・・・

大津市の財政は、今のままじゃ5年後には319億円の赤字(単年度)になる。
しかも悲惨なことに、今ある公共施設をすべて維持した場合、今後60年で現在の約1.5倍の66億円もの維持費がかかるようになる。
だから歳出を減らさねばならない。

大津市には、2011年度までの6年間に87の公共施設を指定管理者制度に切り替えた結果、計約20億円の経費を節減できた実績がある。
だから、ガンガン指定管理制度を導入して、歳出を減らすぞ!!という越市長のもと、
「市は図書館や市場、病院のほかにも、ごみ焼却場や市営団地の建て替え、学校給食共同調理場の移転新築、大津びわ湖競輪場の跡地利用などで今後、外部委託や民営化を検討する」とのことだけど、
それってどうよ?という記事です。

興味深いと思ったのは、行政が民間委託することを批判的に捉えた記事だからです。
武雄市図書館の事例から、民間委託をプラスに書く記事が多くて、ちょっと冷静になるべきでは?と感じていたので図書館の改築を検討中の守山市も他人事ではないので、考えてみたいと思います。

武雄市図書館万歳!の記事
利用客殺到! 佐賀・武雄市図書館の「体が喜ぶ空間」

2013年のオープン直後は様々なメディアに取り上げられ、樋渡さんすげー!的な礼賛ばかりだったことをご記憶の方も多いと思います。
行政やその他議員様ご一行の視察ラッシュでまちは特需に沸いたと聞きます。
上の記事も、それから1年半経った実績を鑑み、樋渡さんへのインタビューを交えながら、天才変人市長がいかに素晴らしい発想かを褒め称えているもの。
これだけ読めば、誰だって「うちのマチでもやりたい!」と思いますね。


でも中には冷静な記事もありまして・・・

オープンの1年前に
波紋広げる武雄市図書館のツタヤ委託計画
と地元「佐賀新聞」が記事を掲載されています。

記事の中にある
「営利ではない図書館運営が委託に向くか。質の維持向上は大丈夫か」
「図書館は貸し出しだけでなく調査や相談機能も重要。職員には経験と専門性が必要で、経費節減が一つの目的の指定管理者では勤務態勢が短時間のシフト制になりがち」
「利用カードの個人情報管理を不安視する声」
「市議会には公募でなく市長判断でCCCを選んだことへの疑問」
という指摘はいかにも的を得ていて、この辺りの課題は置いておいて、走り出したことがよくわかります。

※下の記事から「選定については議会が承認していること、Tカードは利用するしないを選択できることになったので現状では問題がない」そうです。


それから、今年の1月に武蔵野市議会議員の方が書かれたこの記事。
段階が違っていた/武雄市図書館を視察して
自分の市の武蔵野図書館と比較されているのですが、非常にわかりやすいです。

以下、記事から引用。

開館時間 10時~18時(金曜日は19時)⇒9時~21時
開館日 295日⇒365日
単純に開館日時が長くなり、民間委託で非常に便利になったことは明白です。
それに加え、スタバが入ったことや、蔦屋運営の魅力で
来館者数 一日平均867人⇒2529人 (年間92万3036人。361%up)
貸出利用者数 一日平均280人⇒460人
図書貸出数 一日平均1153冊⇒1494冊
「集客施設」としては大成功だとも書かれています。
しかし、来館者数の増加に、貸出数が比例していないことが顕著で、そもそも図書館としての機能がどうなのだろう?と問題提起されています。
ここでこの記事の本論となるのですが、
「住民に対して、まずは来てもらえる図書館なのか。それとも、情報や知識を提供する図書館なのか。図書館の目的、段階の違いを整理しないと図書館は評価できない。人が来たくなる図書館としての視点で判断すれば、武雄市図書館は成功している。」


これがまさしく私の望む答えだと感じました。
図書館を整備する目的とは?

人を集めることなのか?
はたまた
市民の課題解決を支援するとともに、生涯学習に役立つ多様な情報提供を行っていくことなのか?

武蔵野市議がおっしゃるように、自分のまちの図書館の段階を知ることが大切です。

冒頭の京都新聞の記事では
「将来的な財政難を見越して行政にかかる経費を削減しつつ、民間のノウハウでサービス向上を図る狙いだ」
と書かれてしましたが、これが例えば・・・
「民間のノウハウ・アイデアを活かして、サービスの向上を図り利用しやすく開かれた図書館にするのが狙いだ」
と書かれ、その後にも経費面でなく、開館時間が延びることなどを民間委託のメリットとして書いてもらっていれば、大きく印象は違ったのですが・・・。

この記事だと
「経費削減が必要だから、どんどん民間に委託します」
と書いてるようにしか読めなくて、今後市民からの反発がおおいに予想されます。
いやぁ新聞記事って怖いですね。


大津には既に「図書館を考える大津市民の会」というものが立ち上がり、活動されています。
ホームページの
「いま大津市立図書館に何がおころうとしているかご存知ですか?」
のページには、指定管理制度が導入されたときの問題点として・・・

以下、引用
---------------------------------------------------------------------------------------------
1. 図書館の継続性・安定性が失われます
指定管理者制度を導入すると、基本的に3~5年で業者が入れ替わる可能性があります。司書や職員の継続雇用も難しくなります。経営が悪ければもっと早く交代します。新しい業者はまた一から図書館運営を始めなければなりません。図書館では新しい本から絶版になった古い本まで、郷土の資料や専門書など、扱う資料は多岐にわたるため、経験と知識を蓄積した司書が継続して業務に携われる体制が必要です。

2. 指定管理の委託業者は支出を減らすことでしか利益を増やすことができません
業者は収入を増やし支出を減らすことで利益を多くすることができます。これに対し、図書館の場合は図書館法で無料の原則が定められています。そうなると、業者は、司書等の人件費を削って利益を生み出すことになります。専門性の薄れた図書館の魅力は薄れ、来館者が減ればさらに人件費が削減されるという悪循環に陥り図書館はさびれていきます。
 
3. 図書館の本来業務が最優先されません
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務としています。それに対して、民間業者は利潤の追求を優先します。教育行政との意思疎通や連携もとりにくくなり、図書館活動に対する市議会のチェック機能も大幅に低下します。他の公共施設との連携・協力も困難となります。
---------------------------------------------------------------------------------------------
と以上3点を指摘されています。的確なものもあれば、?という指摘もありますが、
これらは何も大津市立図書館に限ったことではなく、弊社が指定管理を受けている「あまが池プラザ」「うの家(け)」にも共通する点が少なくありません。
私の所感を以下に記します。

【1の課題】
専門員については、守山においても「ほたるの森資料館」という施設(認定NPO法人豊穣の郷が指定管理)において、同じ悩みを抱えておられます。ボランティア程度の報酬しか払えず、専門員を新たに雇用して育てることが困難となっています。(豊穣の郷の他に、現在の金額で請け負える民間企業もない。)
継続性、安定性についても、例えば弊社管理の2施設は今のところ、非公募となっていますが、将来的に公募となった場合、困ることになります。というのも、この2施設の運営はあくまでも「まちづくり」という目的を達するための手段であり、この施設につく人件費は、施設運営のみの人件費ではないからです。近隣商店街や商店主や地元住民など、まちづくりに携わろうとする人々に協力することをやめてしまえば、人件費はおおいに削減できますが、守山のまちづくりは沈滞します。
「栗東さきら」のここ数年の変化がわかりやすい事例だと思います。
※運営者が、栗東市文化体育振興事業団→JR西日本グループの企業→株式会社ケイミックス(現在)と地元と全く関係のない企業となる中で、「過去は活動に協力的だったのにそうでなくなった」「対応がどんどんドライになってきている」という声をよく聞きます。

【2の課題】
これについては武雄市の事例のように、館内での物販を許可する、スペースにテナントをいれて集客を図るとともに収入を得るなど、条例次第で収益を得ることは可能だと思われます。
実際、弊社管理の2施設はその手段で、微小ではありますが収入を得ています。

【3の課題】
「本来業務を優先せず、企業だから利益を優先する」という理屈は少々決めつけすぎな感があります。
気持ちはわかりますが・・・。この前提だと、そもそも指定管理制度が成り立たなくなるので、それを評価しチェックできる仕組みづくりを行政の役割として期待するしかありません。


では大津はどうすべきか。

ただ議論ばかりしていても何も進まないので、市長が強引に突破するという手法もあるかとは思います。
武雄市はある意味、これで成功だと評価されました。(あくまで目的が集客施設をつくることと、メディア戦略にあったとすればですが)
二番煎じで大津がやってもそこまでの効果は見込めない。というより、CCCのように都合よく優秀な民間企業が手を挙げるとは思えません。

本気で図書館をより良くしようとなさっているなら、その前に上の会が主張される中身(蔵書を増やす、司書を増やす)の改善を実施すべきではないでしょうか。
それ抜きにサービスのいい民間企業が運営したところで、図書館の機能が向上するはずはありません。

民間に運営を委託するならするで、その準備が必要なのです。
ちなみに武雄市はCCCに委託するにあたってそれぞれ
※CCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブ TSUTAYAの運営母体のこと
4億5千万円(武雄市)

3億円(CCC)
と計7.5億円もの巨額を、2013年のオープンにあたって「武雄市図書館」に投資しているのです。
(2000年にオープンしたばかりなのに、なんでこんなにお金使うんだ!という批判も少なくありませんでした)


ということで、表題の「大津市立図書館を民間委託にすべきか否か」についての結論。

間違いなく言えることは、まだまだ市民の理解も不足しているし、そもそも何の為に指定管理にするかが明確になっていません。
民間委託にすべきか否かの前に、
「大津市立図書館をどうしたいのか?」
「大津市立図書館はどうあるべきなのか?」
をもっと議論すべきだと思います。

経費削減ばかりが先行すると、文化芸術などのような「経済的合理性の判断が難しい分野のものは全て廃止!」となってしまうのではないでしょうか。



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Posted by みらいもりやま21 at 13:26│Comments(0)つぶやき

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